子育てが一段落して、家の中が急に静かになった──
そんな日が、誰にでも訪れます。
私もそうでした。
毎日バタバタと過ごしていたあの頃が嘘のように、夕方になっても家の中が静か。
「食卓を囲む」という夕食ではなく、帰ってきた順に私がご飯を用意する──そんな日常に変わっていきました。
一人で食べることも増え、なんとなく、心の中までぽっかり穴があいたような感覚になりました。
私なんて、まだ小学生だった頃の子供を思い出し、もっと優しく向き合っていけば良かったな…なんて、涙しそうになったこともあります。
まだ同居しているのに──!
どんなに昔を懐かしんでも、過去に戻るわけではない。
子離れをしっかりしなければ。
そう思ったところから、ケンカが増えていた子供に関わり過ぎないように心がけ、少しずつ“自分の世界”が開けていったのだと思います。
きっと、同じような想いをしている人は少なくないと思います。
子育てが終わったあと、家の中が静かになる── その“静けさ”は、想像以上に心に響くものです。
子育て卒業後に訪れる“静けさ”と喪失感
子供が大学に進学したり、就職で家を出たり。
たとえ実家暮らしを続けていても、友達やサークル、バイトで忙しくなり、家で過ごす時間はぐっと減ります。
あんなに毎日話していたのに、今ではLINEひとつも来ない日がある。
そんな状況に、寂しさを感じたのは私だけではないはずです。
でも、ふと考えると、成長していく子供に「寂しい」と感じているのは、親である私の方だったのです。
子供はしっかり成長して、自分の世界を作りはじめています。
それなのに、親の私は、いつまでも昔と同じ関係を求めていたのかもしれません。
「いわゆる“子離れ”できていないのは、自分の方なんだな」と気づいたとき、少しショックでもありました。
でも、これは多くの母親が通る道。
それだけ我が子に愛情を注いできた証でもあると思います。
子育て卒業、夫婦関係にも変化が訪れるー「子供の話」しかなくなったそのあと
「これからは夫婦ふたりの時間を」と思っていたはずなのに、いざ子供が巣立つと、会話の中心はいつも“子供の話”。
夫は仕事が忙しく、休日もなんとなくすれ違い。
気づけば、ふたりの会話は減り、同じ空間にいても心の距離を感じることがありました。
「若い頃に思い描いていた未来と違う」
そう感じたとき、初めて自分の人生を見つめ直すようになったのです。
よく「子供が巣立ったら、自分の時間を楽しめばいい」と言われます。
でも、現実はそう簡単ではありません。
いきなり「自分の世界を持て」と言われても、すぐには見つかるものではないのです。
長年“家族のため”に生きてきた人ほど、いざ「自分のために生きる」と言われても、何をすればいいのか分からないのではないでしょうか。
ママ友との関係も、子供の成長と共に自然と薄れていきます。
「趣味を始めれば?」と言われて、いろんなことを始めてみるものの、なかなか心から夢中になれるものに出会えない──それが現実なのだと思います。
「自立」とは、孤独ではなく“自分を尊重する”こと
そんな時期を経て、私がたどり着いた答えは「自立」でした。
でも、自立と聞くと、「一人で生きる」「孤独」と思う人も多いですよね。
けれど、本当の自立とはそうではありません。
「自立=自分で立つ」こと。
つまり、自分の選択に責任を持ち、自分を大切にして生きることです。
結婚していても、家族がいても、自立はできます。
一見「甘えて全部やってもらっている」ように見えても、芯の部分を自分で決めているなら、それは立派な自立です。
反対に、働きに出ていても、
「周りに言われたから」「なんとなく続けているから」だけなら、それは本当の意味での自立ではないのかもしれません。
“自分を尊重する”とは、
自分を甘やかすことでも、我慢をやめることでもありません。
本当の意味で自分を尊重するとは、「自分の声を聞く」ことです。
心の中で、「本当はこうしたい」「これは違う」と感じた時、その気持ちを無視せず、丁寧に受け止めてあげる。
それが、自分を尊重するということ。
多くの人は、自分の気持ちよりも“周りの期待”を優先して生きてきました。
家族のため、職場のため、誰かのため──
そうやって生きてきた人ほど、「自分の本音を聞く」という習慣を忘れてしまっています。
でも、どんな関係の中でも、まずは自分を大切にすること。
それが、自立の第一歩であり、他人を大切にできる土台でもあります。
自分を尊重できる人は、他人の意見に振り回されません。
なぜなら、自分を信じているからです。
そして、自分を信じる力は、日々の小さな「選択」から育っていくのです。
依存の中で見失う自分──そして、気づくことから始まる変化
以前、こんな言葉を聞いたことがあります。
「結婚は、依存し合うもの。みんなそうでしょ?」と。
その女性は、いつも「夫が私を雑に扱う」と言っていました。
でも話を聞くうちに気づいたのです。
彼女はどこかで、「自分は何もできない人間で、誰かに補ってもらうのが当たり前」だと思い込んでいたのだと。
「私は何もできない」という意識は、自分を見下しているのと同じ。
だから、自立している人から見ると、そこに苦しみの原因があることが分かります。
けれど、自立がまだできていないときは、支えてもらうことが前提になっているので、その仕組みに気づけません。
「私はできない」と言えば、誰かが助けてくれると思い込んでしまうのです。
でも、気づいたときには「人が私を雑に扱う」と感じるようになってしまう。
厳しく聞こえるかもしれませんが、自分を下に置いている限り、周りが自分を上に見ることはありません。
たとえそれが謙遜のつもりでも、「私は何もできない」と口にすれば、周りはその言葉通りに受け取ります。
日常の中でも、自虐ネタや失敗談ばかりを話していませんか?
「私ってダメなんです」と笑う人を、可愛いと思ってもらえるのは、実は自立している人。
しっかりした人がふと見せる“隙”だからこそ、魅力に見えるのです。
だからこそ、自分を尊重すること。
それが、すべての関係を良くしていく第一歩なのです。
自立して生きるということ。それはーー
自立して生きるということ。
それは、生きるうえでの選択を、誰かのためではなく、自分のために行うということだと、私は思います。
「子供が巣立ったあとの喪失感」は、決して悪いことではありません。
それは、これまで家族のために全力で生きてきた証であり、“自分の人生を生き直す”タイミングを知らせてくれるサインでもあります。
そして、自立とは、一人で孤独に生きることではありません。
自分の軸を持ちながら、誰かと協力し合って生きていくこと。
そのバランスこそが、本当の強さだと思います。
毎日の小さな出来事の中で、「自分はどうしたいか」を基準に選択していくことの積み重ねが、自立であり、あなたの人生を少しずつ変えていくのだと思います。
子供が巣立った今こそ、「自分の世界」を取り戻すときです。
誰かのためではなく、“自分のため”に生きていい。
そして、そのことを真剣に受け止めた瞬間から、あなたの人生は、静かに動き出すと信じて、自分に向き合ってみてください。
そこから「自立」が始まります。
何かを始めるのに、遅すぎることはありません。
自分を大切にする第一歩として、「学び直し」や「自分磨き」から始めてみませんか?